暴雨郵便局

E21 · A

七十七号室

真鍮の鍵を握るあなたへ

キー・タグには77の数字、真鍮の縁は大勢の手に磨かれて光っています。この手紙は、1990年10月のアメリカ南部、あるモーテルから届きました。見渡すかぎり続く幹線道路、地平線まで平らにのびる荒れ野。封筒は紺色の綿の紙で、道端の看板を思わせる手描きの文字が、くすんだ珊瑚色とクリーム色で刷られています。そばには、セージグリーンの道路の線、長い地平線、黄土色のはがきの角。

十月の夜は早く来て、道にはもう明かりのついた窓がひとつ残るだけ。旅の途中で病に伏したある俳人は、最後の句のひとつをこう詠みました。「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」——松尾芭蕉『病中吟』(1694年)

七十七号室は小さな部屋です。ベッドとランプ、便箋がちょうど置ける机。どうぞ泊まっていってください。書きたくなったら書いて、ゆっくり送りましょう。道中で雨に降られても、手紙は平気です。雨のために作られていますから。

おやすみなさい、七十七号室より

暴雨郵便局

1990年10月・アメリカ南部

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