暴雨郵便局

E31 · A

長い夜の急行

眠れない車中のあなたへ

ベルが三度鳴ってから、列車はようやくホームを離れ、ブダペストへ向かって、1913年11月の夜に入っていきます。窓の外には、この冬はじめての細かい雪。ドナウの夜明け号が運んできた封筒は、深い青緑の厚手の紙で、題字は鉄道書体の華やかなセリフ体、長い合字が飾りのように尾を引きます。古い真鍮のような客車の唐草模様が巻きつき、隅には暗赤色のゴシック窓の影、クリーム色の時刻表の帯、細く彫られた雪の結晶。

この月、パリで一冊の長篇小説が出版されました。書き出しはたった一文です。「長いあいだ、私は早くから床についた。」——マルセル・プルースト『スワン家のほうへ』(1913年)

けれど、この夜行列車で早く寝る人はいません。私たちも、この夜をいっしょに起きています。夜が明ければ、ドナウが窓の外でゆっくりと明るくなるでしょう。ようこそ。手紙が長くなっても大丈夫。夜はまだ長いのですから。

おやすみなさい、ドナウが明るむまで

暴雨郵便局

1913年11月・ブダペスト行き

追伸 荷物はご自分でお守りください。手紙は見張らなくて大丈夫です。

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