M09 · B
自由というフィクション
まだ物語を信じているあなたへ
暴雨郵便局へようこそ。1991年3月、ウシュアイア。この一枚は淡い施設の緑色で、使い古した登録票のように繊維が粗く浮いています。さまざまな書体から切り抜いた言葉がそのまま貼り込まれ、額縁のなかでは赤い階段がどこへも通じず、細い黒線は迷路になって折れ曲がり、資料番号のすき間には、誰かが自分の文章をインクで書き込んでいます。
五年のあいだ囚われの身だった作家は、正気を失った老騎士にこう言わせました。「自由はな、サンチョよ、天が人間に授けた、もっとも尊い贈り物のひとつなのだ。」——ミゲル・デ・セルバンテス『ドン・キホーテ』後編(1615年)
物語は、看守が鍵を持たないたったひとつの扉だと、私たちは信じたい。ひとつ書いてください。赤い階段の下に、ほかの物語といっしょにしまっておきます。
あなたの文章に番号がつきませんように
暴雨郵便局
1991年3月・ウシュアイア